新しい地質時代突入という意見
確かに人間が地球に与えた影響ってのは少なからずあると思うし、核実験で降り注いだ放射性物質や化石燃料の消費によるC14の同位対比の影響というのも理解できます。
根拠はあっても人間が(勝手に?)決めた地質時代ですから、今度地球を利用する人間の次の高知能生命体に、また勝手に決めてもらったら良いのではないのでしょうか?
ニュース – 環境 – 地球、新しい地質時代に突入か(記事全文) – ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト
James Owen
for National Geographic News
April 7, 2010「年をとると時間の流れが速くなる」とよく言うが、45億7000万年前に生まれた地球も同じ感覚かもしれない。というのも、次の地質時代に数百万年早く突入したとする最新の研究成果が発表されたからだ。
地球、新しい地質時代に突入か
岩石層に残された生物の化石などで区分する地球の地質時代は、通常は300万年以上のスケールで計られる。現在の「完新世」の幕開けは1万1500年前と定義されており、本来ならまだ始まったばかりと言えるだろう。しかし今回発表された新しい研究は、地球は既に“人類中心時代(アントロポセン)”に突入したと論じている。
アントロポセンという言葉は2002年に既に使われており目新しくはない。研究共著者でノーベル化学賞受賞者のパウル・クルッツェン氏の造語で、産業革命以後の約200年間に人類がもたらした未曾有の変化を言い表している。
しかしアントロポセンという時代区分の定着を裏付ける材料は、最新の研究レポートだけではない。
「生息環境の破壊や環境汚染、動植物の絶滅など、近年、人類が地球に与えてきた影響は計り知れないものがある。地球の岩石層に、地質時代の明確な境界として刻まれることになるだろう」とクルッツェン氏らは主張する。
イギリスにあるレスター大学の純古生物学者で研究共著者のジャン・ザラシーウィッツ(Jan Zalasiewicz)氏は、「エネルギー利用や環境操作に長けた人類は、地表の地質学的過程に大きな影響力を持つようになった」と話す。
しかしそれが事実だとしても、アントロポセンが地質学の国際組織「国際地質科学連合」の公式な認証を得るのは、早くて数年後、遅ければ数十年先と思われる。
アントロポセンが公式な地質時代と評価されるには、まず、岩石層に刻まれた完新世との境界線(マーカー)を特定し、明確に定義しなければならない。
イギリスにあるリーズ大学の古気候学者アラン・ヘイウッド氏は今回の研究には参加していないが、第三者の立場で次のように解説する。「堆積記録を見た遙か未来の地質学者が、アントロポセン時代の始まりを認識できるかどうかが重要だ。疑う余地のない高精度のマーカーが世界各地に存在しなくてはならない。これは口で言うほど容易な事態ではないだろう」。
しかし1945年以降の核実験が残した放射能の痕跡などは、マーカーとして利用できるかもしれない。「放射性物質がほぼ世界中に降り注いだ時代」として、ヘイウッド氏もその可能性に注目している。
この方法論には前例がある。約6550万年前、恐竜などの動植物が大量絶滅した白亜紀と古第三紀の境界層には高濃度のイリジウムが存在しているが、衝突隕石がまき散らしたと考えられているこの物質は、2つの時代を区分するマーカーとして現在利用されている。
研究共著者のザラシーウィッツ氏はナショナルジオグラフィック ニュースの取材に対し次のように答えている。「現生する生物も化石化すれば、完新世とアントロポセンを区分する未来のマーカーになるだろう。例えば化石燃料の消費が大々的に始まる前後では、海洋プランクトンの炭素同位対比に違いが見られるという」。
また、有鉛ガソリンの燃焼から放出される鉛粒子など、持続的な汚染の痕跡も新しい地質時代の定義に一役買うかもしれない。
アントロポセン時代の公式認定を推進する動機は、科学的な好奇心だけではないようだ。
「Environmental Science & Technology」誌の最新号に掲載された、新たな時代の幕開けを唱えている研究レポートは、炭素排出量の削減や生物多様性損失の歯止めに貢献できるかもしれない。また、環境保護法などを制定する証拠資料としても活用できる。
リーズ大学のヘイウッド氏はこう話す。「公式認定に至れば環境変化に注目が集まり、保護へ向けた強いメッセージになる。ただし、新時代の始まりを示唆する科学的根拠を、政治家のご都合主義に利用されてはならない」。
ザラシーウィッツ氏も政治家の関与を排したいと考えている。「地質年代スケールの修正は、事実のみを根拠に科学者が取り扱うべき事柄だ。しかも完新世はまだ始まったばかりで、努々慎重さを失わぬように心がけねば」。