海底地すべりと津波の関係

巨大地震の上下方向の断層運動の他にも、海底地すべりによる津波の発生の可能性が言われるようになってきました。
逆に断層運動よりもこちらの影響の方が強いんじゃない?とも思えてしまいます。

注意すべきことは、マグニチュードが6前後でも起こりうると言う話である。
そういえば駿河湾で発生した地震のときにも、発生した津波が地震の規模に対して大きいと言う話がありましたね。
今後、海底地すべりを起こしそうな区域のチェックも津波防災に必要になるのでしょうか?
とてつもなく大変なことだなあと思ってしまった次第です。

ニュース – 環境 – カリフォルニアの津波リスクは想定以上(記事全文) – ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト

南カリフォルニアやサンフランシスコ、また同様の地殻活動が見られる他の地域では、大規模な津波に襲われるリスクが従来考えられていたよりも大きいとする研究が発表された。2010年1月12日に発生したマグニチュード7.0のハイチ大地震による津波を分析した結果、海底地滑りによる津波は定説よりも頻繁に発生しているらしいことが判明したという。

 津波は一般的に、地殻の一部分が地殻の別の地殻に乗り上げるか下に潜り込むことで起きる地震によって発生すると考えられている。研究チームを率いたテキサス大学オースティン校の地球物理学者マシュー・ホーンバック氏によると、この地殻の運動によって海底が上下して海水が揺り動かされ、強力な波が生まれるという。

 しかしハイチ大地震の場合は、プレート同士が主として水平方向に動き、互いとすれ違う形になっていた。この時、高い所で3メートルに達する津波が発生したが、これは海底の隆起ではなく、傾斜が30度に及ぶ斜面での海底地滑りによって引き起こされたとホーンバック氏は推測する。実際、過去318年間にハイチとその周辺の島々で確認された9回の津波のうち3回は、海底地滑りと「直接的な関係性」を指摘できるという。「この間の記録を調べれば、海底地滑りが頻繁に起きていることがわかる」。

 地質学で“横ずれ断層”と呼ぶ横方向に動くこのような断層は、他の沿岸地域にも存在する。例えば、周辺が地震多発地帯として知られるカリフォルニア州のサンアンドレアス断層は、1989年に北カリフォルニアで発生したマグニチュード7.1のロマプリータ地震の震源となった。記録を見るとこの地震に伴って異常な海水の動きがあり、今考えれば、津波に似た小規模な海水の上下動が起きたのではないかとホーンバック氏は指摘する。「この研究を行う前にロサンゼルスのビーチで大きな地震に遭遇していたら、津波のことはそれほど深刻に考えなかっただろう。しかし今は違う」。

 今回の研究は、それほど大きくない地震でも海底地滑りが発生し、その結果津波が起こる可能性があることも示している。「1907年にジャマイカで起きた地震では海底地滑りによって複数の津波が発生したが、この地震はマグニチュード6.5しかなかった。一般にマグニチュード7未満の地震では津波警報は発令されない」とホーンバッハ氏は説明する。

 同氏によると、海底の急斜面の縁に軟らかい堆積物が固着しないまま大量にある地域などが危険地帯だという。研究では、ハイチなどカリブ諸島で森林伐採の影響によって津波の危険性がさらに高まっていることがわかった。森林伐採で土壌の侵食率が高まり、沿岸地域の土壌が不安定になるためだ。「ジャマイカでは、同じようなデルタ地帯で大規模な開発が行われているが、このような場所に建物を建設することは避けたいし、地震の時にはそこにいたくないだろう」。

 台湾のチュウレキ市にある国立中央大学の馬国鳳(Ma Kuo-Fong)氏によると、横ずれ断層があることで知られる台湾西部でも同様な海底地滑りによる津波が複数回発生しているらしいという。同氏は電子メールでの取材に対し、「いくつかの研究の結果、マグニチュード6.5程度の中規模地震に伴って異常な津波が観測されている」と答えている。

 このような津波の規模は必ずしも大きくならないかもしれないが、人口密集地域では大きなリスクになり得ると、オレゴン州立大学の海洋地質学者クリス・ゴールドフィンガー氏は付け加える。同氏は電子メールでの取材に対し次のように答えている。「南カリフォルニア、シアトル、サンフランシスコなどがその好例だ。津波の規模としてはそれほど大きくなくとも、ロサンゼルス港など沿岸部のインフラに被害が出る恐れがある。建設時に津波の被害を想定していないからだ」。

 今回の研究は一部の専門家を驚かせるかもしれない。しかし、カリフォルニアの危機管理計画には横ずれ断層による津波のリスクも既に織り込み済みだと、南カリフォルニア大学津波研究センター所長のコスタス・シノラキス氏は語る。同氏は電子メールでの取材に対し、「2200人以上の死者を出した1998年のパプアニューギニアでの津波以降、中規模の陸上地震でも沿岸近くを震源とする場合は海底地滑りが発生し、大規模な津波が起こる可能性があることがわかっている」と述べている。また同氏は、ハイチの津波の原因が海底地滑りだと確信しているわけではない。「複雑な地殻の運動によって起きた可能性もまだ明確には否定できない」。

 いずれにしろ、地球上のどこにいても、どのようなタイプの地震が起きても、沿岸近くでは津波の危険を認識することが重要だと同氏は助言する。「もし30秒以上の揺れを感じたり、海面に異常な動きが見られたりした場合は、すぐに内陸か高い場所に避難するべきだ」。

 この研究は「Nature Geoscience」誌オンライン版で2010年10月10日に公開された。

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