地道な研究の上の成果

50年前にはじまった生物の研究が、今実を結びつつあるとは凄い研究です。
始めた研究者は、既にこの世を去っているのに、受け継がれてきたのが「ハエ」とは、地道な研究の成果なのでしょう。

 

2009/12/09追記

今の世の中の風潮が、「結果はすぐでなければ結果ではない。研究成果スピード競争。」といった状態にあります。

でもこの研究は、決してスピードでは為し得ない50年という時間がかかります。

最初に始めた森教授は、たぶん周りから「あの人暗いところでハエなんか飼い始めて、おっかしいよね?」なんて揶揄されていたことでしょう。

ショウジョウバエの寿命が短いことは中学理科でも習うことかもしれませんが、環境を変えて世代を積ませるとどうなるんだろう?というスタートはそこからしか切ることができません。

そういう意味でこの研究は非常に興味深いと思います。今から始めても、結果が得られるのは50年。

もしかしたら、このハエの子孫を欲しがる研究者はたくさんいるのかも知れません。

暗闇50年、ハエ「進化」…1400世代飼育 : 科学 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

暗闇50年、ハエ「進化」…1400世代飼育
50年以上、暗室で飼育したショウジョウバエ=京都大提供
普通に飼育したハエ=京都大提供

 ショウジョウバエを50年以上、約1400世代にわたって真っ暗な中で飼い続けると、姿や生殖行動などに変化が起きることが、京都大の研究でわかった。

 生物の進化の謎を実験によって解き明かす初の成果として注目を集めそうだ。横浜市で開かれる日本分子生物学会で9日発表する。

 1954年、理学部動物学教室の森主一(しゅいち)教授(2007年2月死去)が、暗室でハエの飼育を開始。以来、歴代の教員や学生らが、遺伝学の実験用に代々育ててきた。

 暗室のハエは、においを感じる全身の感覚毛が約10%伸びて、嗅覚(きゅうかく)が発達。互いをフェロモンの違いで察知して繁殖し、通常のハエとは一緒に飼ってもほとんど交尾しなくなっていた。

 全遺伝情報を解読した結果、嗅覚やフェロモンに関する遺伝子など、約40万か所でDNA配列の変異が見つかった。視覚にかかわる遺伝子の一部も変異していたが、光には敏感に反応するので視覚はあるらしい。ショウジョウバエの寿命は約50日。1400世代は、人間なら3万~4万年に相当するという。

 阿形清和・京大教授は「通常とは異なる環境で世代を重ねることで、まず嗅覚などの感覚器官に差が生まれ、それが生殖行動に影響し、やがて種の分化につながっていくと推測できる」と話している。
(2009年12月8日14時49分 読売新聞)

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