創業者が頑張る企業は、後継者が育たない現実

宋さんのブログ、久々に唸りました。
「ではなぜ創業者が頑張る企業では後継者が育ちにくいでしょうか。それは創業者が自分の目にかなう後継者を選び育てようとするからです。」

あぁ・・・後継者と目論見、大切に温室栽培をされたような人に、まず後継者となって経営者となって戦えるわけがない。
創業者が自分の目にかなう後継者=時代遅れの人ってことにもなりうるということなのかもしれません。

これから就職される若い人が会社を選ぶときには、創業者・経営者の全権委譲がスムーズに進んでいる会社に入社される方が良いと思います。
それができていない会社は、どんどん動脈硬化が進み、創業者が死んだとき=会社が心不全を起こすとも言い切れないところがあるのです。

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さようならのタイミング
子供の冬休みに合わせて半年ぶり一カ月間、毎日東京で生活しました。どうしても昔からの友人知人と会ってしまいます。どうしても昔からの経営者の話をしてしまいます。

70代と覚えていた老舗の食品メーカーの社長と家族同士で食事をすると、なんと彼はもう80歳になっていました。体力がないため、食事後の我々のお喋りに付き合わずお帰りになりました。

その前日、経営アドバイザーを頼まれたオーナー企業の会長(70代後半)からショッキングな話を伺いました。すかいらーくの創業者茅野さんが昨年亡くなられていました。尊敬してきたベンチャーの先輩でしたが、もっと早い段階でうまく会社を他人に任せることができなかったのかなと思います。

武富士の武井さんを思い出しました。あの人なつっこい笑顔はどうしても忘れられません。しかし、彼の会社との別れ方も決して個人と会社にとってハッピーとは言えません。青春をかけてきた創業と拡大を経て最後はやっぱり悔しい思いでこの世を去ったでしょう。

ダイエー創業者の中内さんの引退インタビューも忘れることができません。一代の革命児であり英雄だった彼がインタビューの時にやっと引退の在り方について失敗を認めました。悔やむ姿に私は目頭が熱くなりました。

この原稿を書いているのは2月8日です。いつもの通りトイレで日経に目を通すとCSKの近況を知りました。ソフトバンクの孫さんが尊敬し指導を仰いだ大川さんですが、天国でCSKの現状を知ることができたらどう思うのでしょうか。

ユニクロは大成功です。それは柳井さんが引退を止めて社長に復帰したからだと多くの方々が思うのでしょう。友人の玉塚さんは、とても今の柳井さんのやり方をしなかっただろうと私も思います。しかし、だからこそ、柳井さんの後任はますます不可能になりました。

スズキ自動車の鈴木会長の記者会見は私はなぜかいつも痛々しいと思います。カメラの前で後継者選びが失敗したと認めたのは鈴木さんの率直なお人柄によるもので感心しますが、だからといって鈴木さんの後の問題は解決された訳ではありません。

有名な企業だけでも枚挙にいとまがないのですが、日本経済を支えている大量の中小中堅企業も実は同じ構造問題を抱えている訳です。古い創業者が頑張れば頑張るほど継承問題が難しくなるのです。

ではなぜ創業者が頑張る企業では後継者が育ちにくいでしょうか。それは創業者が自分の目にかなう後継者を選び育てようとするからです。

創業者がいいと思って選び育てようとする後継者は本物の経営者になれません。
そもそも創業者自身も育てられたのではなく、育ったのです。多くの若い人に経営させ、失敗もさせ、その中から権力闘争も含めて自然な形でトップの出現を待つべきです。

イトーヨーカドー創業者の伊藤名誉会長は私の前でも遠慮なく鈴木敏文さんのことを批判したことがあります。それも痛烈な批判でしたが、その鈴木さんに長い間、伊藤さんは経営の全権を任せてきました。嫌いなところがあっても経営理念が合わなくても、任せる心の強さが結果として人を育て人材を活かすのです。

創業者の最も重要な仕事は新しいビジネスの鉱脈を掘り当てるのではありません。自分が若いうちに体力があるうちに会社と別れることです。より広い視野とより長い戦略からみた場合、さようならのタイミングこそ創業者の最も重要な仕事でしょう。

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創業者が頑張る企業は、後継者が育たない現実” に対して2件のコメントがあります。

  1. ウサギの恩人 より:

    まったくおっしゃる通り。
    ただ、企業は継続しなければならない、ということもウソだと思う。

  2. 企業は継続する義務はないと私も思います。
    アップルのJOBS氏がこの世からいなくなったら、アップルはアップルではなくなるような気がしますしね。会社も生きもので寿命があるんだと思います。

    ただ、ある程度大きな会社は、社会的義務があると思います。
    スズキ自動車クラスの会社が、俺が死んだら解散ね・・・ではねえ。
    まあ実際、何処かに吸収されるのかも知れませんが・・・
    (私が所属している会社なら、ありうるかも知れない。「私の死を持って解散とする」なんて遺言、冗談にならない。)

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