I-2 経済成長の実現を目的とする社会資本整備について(4)技術者・建設産業の生産性向上・担い手確保ｰ令和7年度技術士第二次試験問題〔建設部門〕
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技術者・建設産業の生産性向上・担い手確保は、「経済成長の実現」を支える社会資本整備の基盤となる重要な課題です。この課題に対応するための解決策、波及効果、および技術者倫理・持続性の観点からの要件についてまとめます。
1. 課題：サプライチェーン全体を通じたデジタル技術の適用と生産性向上
この課題は、長時間労働の是正、若年入職者の減少、熟練技術者の高齢化といった建設産業が抱える構造的な問題を解決し、社会資本整備の品質とスピードを確保しつつ、コスト効率を高めるために不可欠です。
1. 複数の解決策（設問(2)への対応）
| 解決策の分類 | 解決策の内容 |
|---|---|
| デジタル化の推進 | 【解決策1】BIM/CIMを核としたサプライチェーン全体のデジタル連携の徹底: 計画・調査・設計から施工、維持管理に至る全プロセスで、BIM/CIM（Building/Construction Information Modeling, Management）の活用を義務化し、異なる事業者・段階間でのデータ連携をシームレスに行うための技術標準とプラットフォームを確立する。 |
| 現場の自動化 | 【解決策2】AI・ロボット技術を活用した高度な自動施工・検査システムの導入: 危険な作業や単純作業を担う建設ロボット、自律運転建機、AIによる品質・進捗管理システムを開発・導入し、現場の安全性と生産性を大幅に向上させる。 |
| 制度・人材育成 | 【解決策3】発注・契約制度の見直しと高度デジタル人材の戦略的育成: デジタル化のインセンティブとなるよう、BIM/CIMの活用度合いを評価する発注方式や積算基準を導入する。また、高度なデジタル技術を扱える技術者（データサイエンティスト、BIM/CIMエキスパート）を育成するための戦略的な教育プログラムを産学官連携で整備する。 |
2. 波及効果と懸念事項への対応策（設問(3)への対応）
1. 期待される波及効果
生産性の抜本的向上と工期短縮: デジタル連携と現場の自動化により、手戻りや待ち時間が大幅に削減され、建設生産システム全体の効率が向上し、社会資本整備のコストダウンと迅速化が実現します。
魅力向上と担い手確保: 危険で過酷な作業がロボットに代替され、データ分析やデジタル管理といった高付加価値な業務が増えることで、労働環境が改善され、若年層や女性にとって魅力的な産業へ転換し、担い手確保につながります。
維持管理の高度化: BIM/CIMモデルが維持管理段階まで活用されることで、老朽化対策に必要なデータがシームレスに引き継がれ、インフラのライフサイクルコスト（LCC）が最小化されます。
2. 専門技術を踏まえた懸念事項と対応策
| 懸念事項 | 専門技術と対応策 |
|---|---|
| 懸念1: 中小建設業や地方でのデジタル技術（BIM/CIM、AI）導入の遅れ | 専門技術: システムインテグレーション、教育工学<br><br>対応策: 中小企業でも低コストで導入できるクラウドベースの汎用デジタルツールを開発し、導入・運用支援を行う技術者（ITコーディネーター）を配置する。広域連携を活用したデジタル技術研修を地域で実施し、技術格差の是正を図る。 |
| 懸念2: 現場作業員のスキルが不要になり、雇用が失われることへの懸念 | 専門技術: 人材開発・組織論、オペレーションズリサーチ<br> <br>対応策: ロボットやAIを「代替」ではなく「支援」と捉え、現場作業員をデジタル技術を活用した高度な管理者・オペレーターとして再教育するための職能訓練プログラムを策定し、労働力の構造転換を円滑に進める。 |
| 懸念3: デジタルデータ改ざんやサイバー攻撃による品質管理・安全性の低下 | 専門技術: 情報セキュリティ、ブロックチェーン技術<br> <br>対応策: BIM/CIMデータなどの重要情報について、データの認証・履歴管理にブロックチェーン技術の活用を検討し、改ざんを困難にする。建設プロジェクト全体の情報セキュリティガイドラインを策定・遵守し、サプライチェーン全体でのセキュリティ教育を徹底する。 |
4. 技術者倫理と社会の持続性（設問(4)への対応）
1. 技術者としての倫理
品質と安全の確保の徹底: 生産性向上のためであっても、社会資本の品質と安全性を犠牲にすることは絶対に許されない。デジタル化・自動化の技術が、従来の施工・検査基準を満たし、かつ向上させることを客観的に証明する責務を負う。
公正な技術の普及と技術者利益の尊重: 新しいデジタル技術が、一部の大企業や技術者に独占されることなく、業界全体に公正に普及するよう努める。また、技術者個人の知的財産権や労働条件が適切に守られるよう、制度設計に関与する。
2. 社会の持続性
技術革新による環境負荷の低減: デジタル技術（例：BIM/CIMによる資材の最適化）を活用し、建設現場から排出される廃棄物やCO2排出量を最小化し、低炭素型の社会資本整備を持続的に行う。
人材と技術の持続的な継承: 熟練技術者の持つ知見やノウハウを、デジタルデータとして確実に収集し、AI・教育プログラムを通じて若手技術者に継承することで、建設産業の技術レベルを将来にわたって維持・向上させる。
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