僕もSPA!系なのか・・・

「下流社会」という新書、書店で目には付いていたのだが購入には至らなかった。
そんななか、書評があったのでそれを見ていると、僕自身ちょっと読んでみるべき本ではないかと思っている。
今度書店に行ったら、購入してみようと思う。

「下流社会」が日本のものづくりを破壊する(かもしれない)
2005/12/12木崎 健太郎=日経ものづくり
 「下流社会」〔三浦展(みうら・あつし)著,光文社新書221,ISBN4-334-03321-0〕を読みました。最初は消費者を類型化して分類しているところが面白そうで,読み始めたものです。男性は「ヤングエグゼクティブ系」「ロハス系」「SPA!系」「フリーター系」,女性は「お嫁系」「ミリオネーゼ系」「かまやつ女系」「ギャル系」「普通のOL系」などという具合です。どのくらいこの類型化を本気にするかは別として,なかなか説得力はありました。「SPA!系」の特徴を説明するところには 「できればもっと趣味の時間を増やしたいと思っているが,仕事の要領が良いほうではないので残業が多い。週60時間以上労働を過去数年間続けている」などと,結構わが身にはぐさっと来る記述もありました。
 まあこのへんは笑って読んでいたのですが,類型化の後のところ,つまり本論も読み進んでいくうち,だんだん自分自身のことに限らず「非常にヤバい」と思うようになりました。同書で下流といっているのは貧困といえるほど貧しい層を指しているのではなく「DVDプレイヤーもパソコンも持っている」が「総じて人生への意欲が低」く「上昇志向も弱い」人々のこと。このグループの人はまた「自分らしさを大切」にする,というと聞こえはいいですが「好きなことだけしたいとか,嫌いな仕事はしたくないという」傾向があるとのこと。「だらだら歩き,だらだら生きている者も少なくない。その方が楽だからだ」。現在の日本の社会はそこそこ豊かになっていて,そこそこの生活は送れるから,あまり苦労したくない,という気持ちは私にもあります。
 いままで多かった中流階層の人がこの下流階層に移行することでその数を増やす一方,高所得とステータスを望む,上昇志向を持った人(おおまかに,これを同書では上流と表現しています)は一定数存在するので,今後は上流と下流が分化していく,といいます。著者の三浦氏は,このこと自体を問題視してはいないようです。多くの人が自分の思うとおりの人生を送れるのであれば,上流の人が多くても下流の人が多くても別に問題はありません。「お金は少しあればいいから,夢を追い求めたい」という人生がその通り送れる社会は,むしろすばらしい社会のはずです。
 問題は,世代を超えて階層が固定してしまう可能性が高いことです。つまり上流のこどもは上流,下流のこどもは下流になってしまう。階層間の交流がないことから,いつか上流が「下流をおもんばかることがなくなる」。すでに「上流が下流のだらだらした生き方をいつまで許容できるか,という問題が起こりつつある」。「上流が下流の生き方を,自分にはできない自由な生き方として憧れることがなくなり」,その一方で下流出身ながらも上昇志向を持つ少数の人さえいなくなってしまう。「『働く上流』と『踊る下流』への分裂」が起こるというわけです。それでも,そこそこ楽しく生きる人が多いのならばまだ良い。「失業率5%,若年では10%以上の状態が恒常化し,毎年4万人近くが自殺して,それでも大衆はそこそこ楽しく生きていると言えるのか?」と著者は疑問を投げかけます。
 何がヤバいかといって,私は「この現象は日本のものづくりの強さを根こそぎ破壊しかねない」と思ったのです。現在の日本の強さは「ミドル層」の強さ,生産現場も分かるし経営も分かる,といった層の働きによるところが非常に強いと思います。「下士官がしっかりしている軍隊は強い」といったところでしょうか。トヨタ生産方式のコンサルタントの金田秀治氏によれば「経営戦略と現場戦略がともに成り立つ」ことがトヨタ生産方式における改善を可能にしている,といいます。「現場はダメモトでも良いと思ったことを実行できる」,つまり事前に効果を正確に数字で予測できなくても活動することが許される。そこには経営と現場の役割分担は存在しつつも,現場には現場の改善志向があるわけです。上昇志向とは少し違いますが,業務に関する上昇志向といってもいいかもしれません。
 中流階層の人がいなくなって,トップエグゼクティブを目指す人と,意欲に乏しい人だけになってしまえば,ものづくりの現場を支えているミドル層は消えてしまうに違いありません。これでは,トヨタ生産方式のような活動は成り立ちません(現状通りのことは続けられるかもしれませんが,改善が進まなくなってしまいます)。大げさかもしれませんが,本当に恐怖を感じています。勘違いならば良いのですが。
 なお同書の最後には,階層の固定を避けるための提案も書いてあります。完全な機会均等の実現が重要という話になるかと思ったら,完全実力主義では仕事や勉強がうまく行かないことの「言い訳がまったくできない」社会になってしまう,その結果「頭の悪さや無気力の原因を遺伝子に求めることになり,悪しき優生思想にたどりつく危険がある」。だから「所得の低い人ほど優遇される様々な措置」が必要ではないか,という提案です。このあたりの視点は,非常に好感が持てました。具体的な策については,同書をどうぞ。

「下流社会」が日本のものづくりを破壊する(かもしれない) – 日経ものづくり – Tech-On!

コメント

Amazon プライム対象
タイトルとURLをコピーしました